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CONCEPT -Think&Talk-|学び続け、進化し続けるビジネスマンに向けて、さまざまな業界のトップリーダー たちと仕事観を語らう。

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人生はもっと自由で楽しくていい―加藤百合子さん

【第3話】転機は、スーツを脱いでジーパンでタメグチで飛び込んだこと。
2018年05月17日
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「数学なんて勉強して何になるの?」お子さんにそう聞かれて答えに詰まってしまう親御さん必見です!
第3話お楽しみください。

加藤百合子

株式会社エムスクエア・ラボ 代表取締役 加藤 百合子さん

HP:https://www.m2-labo.jp/about-us

-Profile-


千葉県生まれ。慶應義塾女子高校を経て、東京大学農学部1998年卒。英国 Cranfield University, Precision Farmingの分野で修士号を取得。2000年にはNASA のプロジェクトに参画し、翌年帰国。キヤノン(株)、産業用機械の開発企業に勤 務、R&Dリーダーを務めた。2009年に当社を創業。2011年日本政策投資銀行 第 一回女性ビジネスプランコンペティションにて大賞受賞 持続可能な社会を目指し、 迷いながらも、地域や社員と一緒にブレることなく進んでいきたい。専門分野は、 地域事業開発、農業ロボット、数値解析。

 

#1 3度の受験と3度の転職で見つけた世界
#2 女性だし、よそ者だけれど、それが私の最大の強みです。
#3 転機は、スーツを脱いでジーパンでタメグチで飛び込んだこと。
#4 私のHappyの根源は、自分の食べるものを自分で手に入れられたこと

以前、加藤さんの記事で「人生で数学を使える場面はたくさんある」というのを見たのですが、ちなみにどういうときですか?

みんな数学なんて勉強しても意味がないというけれど、そんなことはない。バックキャストって聞いたことありますか?将来なんて良くわからないのだけれど、例えば、こういう街にしたい、こういう家族になりたいという理想や希望があって、それに向かって今、何ができるのだろうというのを描いていくことをバックキャストといいます。10年後こうなりたい。じゃあ今できることはこれだ。来年、再来年、どうなりたい?そのために今何をする?この考え方と全く同じなのが数学です。解けなくても全然いいんですよ。受験の科目なので、みんなつまらなくなっていくのだけれど、本当は数学は、言葉と一緒なんですよ。理想の状態があり、その理想の状態になるために、こういう要素をつなぎ合わせて、いかに理想につなげていくかという作業を数学の数式というツールを使って紡いでいくということです。

その理想の状態というのは数式ではないのですね?

違います。例えば「どんなでこぼこ道でも乗っている人には気づかせない車をつくりたい」という理想像があったとして、それを実現するために、どこをどうしていきますかというのを詰めていく。そのツールとして数式を使うだけ。だから言葉と一緒なんですよ。

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なるほど~。そのツールが数式なのか、数式ではないのかという違いだけなんですね。

その通りです。高校の数学で鍛えられると、使えるツールが増える。その思考パターンを鍛えてもらえる。解ける解けないは別問題なのです。解けるように脳みそを鍛えられると、そういう考え方をしやすくなるということです。

ちなみに、授業でそういったことは教えてもらわないですよね。このことにいつ気づかれたのですか?

経営してからですね。そうか!数学ってそうなんだ!と思いました。
研究者は常に理想があってそれに対してどう近づくかです。でも研究者だけじゃなく、新規事業を立ち上げるのも、研究と同じプロセスじゃないかと。このプロセスをどこで習ったかなと考えると、数学からだと気づきました。
面白いんですよ!「農業×anyHappy」というのが私たちの掲げているコンセプトですが、農業という漢字をagriに変えると、コンセプトが一発で世界に伝わるのです。
agri×anyHappy」、これって数式なのですよね。こんなに通じやすい世界共通言語をすでに持っていたのですよ!ただ、解ける解けないで苦手意識を持ったり、得意不得意となるような偏狭な教育が間違っているのではないかと思います。

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数学に限らず、世のお母さん方は、こんな勉強をして何になるのだ?とお子さんに聞かれることも多いじゃないですか。それに対してはどう答えられますか?

それは脳の訓練です。鍛錬です。

なぜその訓練が必要なのですか?

そうですね。自分の身体を鍛えるのと同じで、脳みそを鍛えると、やれる範囲が広がるからです。そうすると人生はますます面白くなる。

ちなみに、私は好きなことや得意なことはやるけれども、それ以外はやらないのですが、それって脳は鍛えられていないですよね・・・。

そうです。もったいないですよ!(笑)

今は、「得意なことだけやればいい」というような風潮じゃないですか。これって良くないですね。

はい、良くないと思いますよ。苦手なことというのは、基本的には先入観で苦手なだけなのです。それは最初に評価されなかったとか、走るのが遅いとか、そういったことで、相対的に見てみんなよりも劣っているから得意じゃない。と思い込んでいるだけで、別に、比較せずに楽しめばいいと思うのです。

これは人生や子育てにも共通されていますよね。

共通です。ちょっとやってみようという、好奇心は大事ですよね。

よく「やりたいことが見つからない」と悩んでらっしゃる若い方を見かけるのですが、これはどうしたらいいですか?

大人が楽しんでいる姿を見せれば、何?何?それ楽しいの?という興味が湧いてくるのではないでしょうか(笑)
今、そのお手本がないのですよ。学校の先生たちも忙しいし、大人もみんなつまんない顔をしています。教える側が、教えること自体、生きること自体を楽しんでいると、それを見ている子どもたちは「人生って何だか楽しそうだ」って思いますよね。

ほんと、ここは教えていきたいですよね。こんなに人生は楽しいのに、楽しそうな大人が身近にいないのですよね。

そうです。お父さん土日には疲れて寝ているとかね。お母さんずっと文句ばかり言ってるとかね。人生はもっと自由で楽しくていいと思うのですが。

本当にそう思います。お仕事での失敗談はありますか?

それは毎日です!それはいっぱいあるな~(笑)
一番は雇用ですね。「人を雇う」という経験をしたことがないまま、県の事業を受けて一通り必要な人数を雇用しました。面接もしましたが、採用ポイントも良くわからないので、その時の相手の話すことを鵜呑みにして採用しました。でも実際働き出してみると、言っていることとできることが全然違う。1週間くらいで、辞めてもらおうと思ったのですが、契約書に試用期間を記載していなかったのです。就業規則もできていなかった。そうするとこちらから辞めてもらうという権利はないという失敗はありましたね。

この失敗を、これから事業を始める後輩たちにアドバイスをするとしたらどうおっしゃいますか?

起業に関しては素人だし、皆何も知らずに始めるじゃないですか。勢いで何も勉強しないで起業するのではなく、人事と総務、経理の基本、最低限のリスクポイントは誰かに指導を受けてからやることをお勧めします。

そうですね。ありがとうございます。
加藤さんの強みを教えてください。

敵を作りにくいことかな。それが強みです。

それってすごいことですよね。加藤さんのヒストリーだけをみると、本当に完璧で、それ故に敵を作りそうな感じもしますが、全く感じさせませんね。

そうですね(笑)。敵は作らないですね。

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なぜ敵ができないのですか?

何ででしょう。自分ではあまりわからないのですが、まわりからはよく「人たらしだ」って言われます(笑)。事業的な観点で言えば、ひとつの軸があり、そこからはぶれていないからでしょうか。話していることが伝わりやすいというのはあると思います。

相手に合わせてお話しするというのが得意なのではないですか?軸があっても伝わらない人ってたくさんいるように思います。軸を持っていること=伝わりやすいことではないように思うのですが、他に何か隠された力があるのではないですか?

ん~確かにそうですね。そういえば研究をやっていた時の話ですが、研究をしているとどうしても自慢話になってしまいます。それだと役員会は通らないし、現場の人たちにも理解してもらえないことが多いんです。そこで鍛えられたというのはあると思います。
あとは、子どもと対峙するときに、子どもに「なんで?」と聞かれて、難しく話すことはいくらでもできるけれど、それではわかってもらえないので、そこでも鍛えられたのかもしれないですね。
伝える言葉は相手によってかなり変えています。農業者さん向け、工業者さん向け、子ども向け、みんな言葉を変えますね。工業者さん向けには理詰めで行きますしね。しゃべる速度も変えています。

それは自然にそうされているのですか?

無意識ですね。通じさせることが目標になると自然にそうなりますね。このあたりの人ってみんなタメ口なんですよ。保育園のお母さん方も、農家さんも。関東から来たとき、それに驚いて、なかなかその懐に入れなかった。それがわかるまでに1年はかかりました。勇気をもって、スーツを脱いでジーパンでタメ口をきいてみる。これをやらないとそこに入り込むことはできないと思ったんですね

例えば、農家さんはすごく年配で、自分の親くらいの年代だったりするじゃないですか。そこにタメ口で入るって勇気が要りますよね。

本当にそのとおりです。でもここはそうじゃないとダメなんですよ。

こういう事を察知する能力と、取り入れて実践する能力をお持ちなんでしょうね。

まず、恥ずかしがらなければ大丈夫かなと(笑)。スタッフには「狸になれ」と言っています。

それはどういう意味ですか?

営業をやっていらっしゃるとみなさんそうだと思うのですが、正しいことを伝えても仕方がない。相手に伝わることが大事です。学歴が高いと尚のこと、最初なかなか狸にはなれません。「私は合っています。貴方のほうが間違っています。」と言いかねません。

初めはみんなそうかもしれませんね。私も最初これで苦労しました。若い時は、正しいことを主張することが正しいと思っていました(笑)確かに納得です。

(撮影協力 本多佳子)

#1 3度の受験と3度の転職で見つけた世界
#2 女性だし、よそ者だけれど、それが私の最大の強みです。
#3 転機は、スーツを脱いでジーパンでタメグチで飛び込んだこと。
#4 私のHappyの根源は、自分の食べるものを自分で手に入れられたこと