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CONCEPT -Think&Talk-|学び続け、進化し続けるビジネスマンに向けて、さまざまな業界のトップリーダー たちと仕事観を語らう。

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人の心と身体の間を見続けたい―穂積桜さん

【第3回】「常識は変化するもの、今が全てではない」
2019年03月28日
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コツコツと続ける努力を小さな努力とおっしゃる穂積さん、積み上げられたものは確実に穂積さんの一部を形成しています。
類いまれなる努力家でいらっしゃるのに、偏らないために対局にあるものも進んで取り入れる。バランスの良さが穂積さんの魅力の一つです。最終話、お楽しみください。
穂積桜

日本医師会認定産業医
精神科専門医 漢方専門医 臨床心理士

産業医 穂積 桜さん

 

2001年 札幌医科大学医学部卒業 札幌医科大学医学部附属病院神経精神科 東京都立松沢病院 久喜すずのき病院において精神科医として研鑽を積む。
国立病院機構東京医療センター、北里東洋医学総合研究所において、内科、東洋医学の知識を幅広く習得 2014年より、精神科、内科の臨床経験に基づく知識のみならず、人事労務、法律の知識を併せ持つプロフェッショナル産業医として稼働 現在16社を担当する。

 
仕事をしている中でこだわっていることは何ですか?

地産業医としても、精神科医としても、クライアントさんの困っていることを聴くということが仕事です。聴いているその瞬間に、想像力を全身でフル稼働させて、クライアントさんの立場に一緒に立ってみるということにこだわっています。



だから、人から好かれているのでしょうね。私も大好きです(笑)

そうですか?ありがとうございます。後は、とても忙しい人事の方々と一緒に仕事をしているので、「こちらの理想を押しつけない」ということも意識しています。



確かにお医者さんもしかり、先生と呼ばれる人は、理想とかこうあるべきということをおっしゃる方もいらっしゃいますね。

そうですね。こうなったら健康になるというのはわかっていて、その人の為に助言するのですが、でもそれができなくて悩んでいることもあります。ですから、今すぐできることを何か一つ手渡しするようなつもりで提案しています。そして少し関係性ができてきたら、もうちょっと背伸びをしたら、できそうなことをお伝えするとようにしています。



どの仕事にも通じますね。
ご自身の強みを教えてください。

この多動なところでしょうか。



多動とはどの点をおっしゃっていますか?

キャリアが一貫していないところです。



一貫させたいと思っていらっしゃるのですか?

医者は技術職という側面が強いですから、一貫している人がすごく素敵だなと思うことはあります。私はそうは生きられないのでしょうがないのですが。ただ、私のような一貫していない医者の良い点もあります。例えば病院だと、患者さんが来るのを待ち続けるような仕事です。けれど私は、積極的に会社に行って色々な人に会えます。健康なうちから人にアクセスできるのです。そういう意味ではやりたい仕事ができていると実感が持てるのは多動力があったからだと思います。

あとは、小さい努力を続けられるのも私の強みです。

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例えばどんな努力ですか?

例えば、語学の勉強ですね。夫について中国に行き半年でHSK6級という中国語の資格をとりました。6級というと低く感じますが中国は数が大きくなるほど上級という考え方があり、HSKでは6級が最上級です。あとは、仕事上必要と感じた勉強をコツコツ続けて臨床心理士や労働衛生コンサルタントの資格を取得しました。何か一つ達成すると嬉しいもので、だんだん努力を続けるのが上手になりました。今のほうが、若い頃よりも楽に習慣化できます。



勉強がお好きなのですか?

勉強が好きというよりは、好きな分野の勉強をしているという感じでしょうか。

語学は好きです。



時間のつかい方のこだわりを教えてください。

寝るのが大好きで、本当は1日8時間は眠りたいです。子どもが生まれてさすがにインプットの時間が足りず、今は睡眠時間が1日6~7時間になっていますが、子どもが生まれるまでは外にいても夜9時過ぎたら眠くなり、10時には家に帰りたくなるキャラでした。



お子さんが生まれてから睡眠時間が減ったのは、お子さんに起こされてしまうからですか?

最初の時期はそうでしたが、最近になり生活が落ち着きだして、時間が少し読めるようになりました。昨年末頃からは夜11時か12時くらいまでの数時間は読書をしています。



お子さんを寝かした後に勉強されているのですね。

はい。そうです。8時頃寝るようになったので、9時までに溜まっている家事をして、その後2時間は読書をしています。



時間は睡眠と読書に使いたいのですね。
人付き合いはどのようにされていますか?

そもそもワンオペ育児中で時間がなくて人に会えないので、人付き合いができていません。夜出かけるのは仕事上の会合などがほとんどですが、今年は少し変えていきたいと思っています。



どのように変えたいのですか?

人に任せられる仕事は任せて、その分できた時間で人に会いに行ったり、ゴルフにも行きたいですね。



是非ゴルフご一緒しましょう!

子供をワンオペで育てているので、一日予定を空けることが難しくなりました。ですので私が今やりたい究極のことは、こういうことかも知れません。



では優先順位はどうつけますか?

最近、グチバチさん(ピョートル・フェリクス・グチバチ氏)という方の『がんばらない働き方』という本を読んだのですが、その中で、「Todoリストではなく、やらないことリストを作る」と書いてあったのです。私の生活では今はまだTodoリストは消せないので、そのリストの中から削れるものがあるのではないかというところを意識しています。



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ちなみに「これはやめる」と決めたことはありますか?

会社の経理作業です。これは人に任せようと思います。

あと、夫からは「家事をもっとアウトソーシングしたら」と言われています。



ご主人からそれを言ってくれるってすごいことですね。多くの家庭では奥さんが使いたいけれど、ご主人が反対しているように思います。

そうなのですか?それならありがたい話ですね。私は結構シッターさんを使っている方だと思うのですが、シッターさんに来てもらって経理作業をするのではなく、本を読んだり学んだり、新たな発想や行動につながる時間にしようと思っています。



確かにそうですね。
迷ったらどう選びますか?

私はあまり迷わないのです。何かを買うときに迷うことはまずありません。それは好きなものが決まっているのかもしれません。お金を使うときも夫に相談することは基本的にありません。事後報告です(笑)。皆さん、どのようなことで迷われることが多いのですか?



私は子どものことが一番迷いますね。保育園か幼稚園か、どの保育園がいいのかなとか。

なるほど〜。重松さんには選択肢がたくさんあったからかもしれないですね!私は選択肢がほぼなかったので、それも迷いませんでした。というか迷うチャンスがなかったですね。



ご反対に迷っている人にアドバイスするとしたら何と声がけしますか?

そ迷っている人はそもそも決めたいのかな?



なるほど!!深いですね。決めたくないのかもしれないですね。
穂積さんにとっての幸せってなんですか?

実は子どもが欲しいとは思っていなかったのです。

ですが、子どもができて、びっくりするほど可愛かったのです。大事なものが増えましたし、幸せと感じることが変わってきました。例えば以前は〇〇を買った、とかどこに行ったことが幸せ〜と思っていましたが、今は日常の中に幸せポイントがたくさん散らばっている感じです。子供が口の周りをベトベトにしながらご飯を沢山食べている姿を見る時や、寝息をたてる子供の側で眠りに落ちる瞬間とか。沢山ありますね。



そうだったのですね。女性は思いがけず人生が変わることが多いですね。
人生の中で大切にしていることは何ですか?

選択肢を増やす視点を常に持ち続けることです。精神科を選択した時にもそのような視点がありました。例えば、ですけれど、単なる小説家よりも精神科医で小説家だと深い小説書きそうじゃないですか?皮膚科医で小説家より精神科医で小説家の方が面白そうな気がするのは私だけでしょうか(皮膚科医の先生すみません笑)。そんな形で、精神科医であることは将来潰しがきくんじゃないかという考えがありました。他にも、例えば産業医になったことで医師としての技量にも働き方にも幅ができました。語学を勉強していることも、仕事や住む場所の選択肢を広げることにつながります。

そういう視点を持ち続けることと、それに見合う努力をし続けることです。



本当に努力家でいらっしゃいますね。
疲れたりへこんだりすることはありますか?そういうとき、どうされますか?

疲れたりすること、もちろんあります。医者的な発言ですが、気分の落ち込みを改善するという一定の裏付けがあるものは、眠る、運動、マインドフルネス瞑想です。



瞑想していますか?

疲れたときはしています。あとは日々の体調に合わせて漢方薬も使っています。



先ほど読書に時間をとっているというお話でしたが、どんな分野の本を読んでいますか?

仕事に関わる本が多いです。最近ですと先ほどのグチバチさんの本を読みました。

あと、私は努力して自分を追い込んでしまうたちなので、なるべくそうならないように、時々ヒモっぽい人の本を読むのが好きなんです(笑)



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(笑)ヒモっぽいとはどういう人ですか?

『しょうがないなと思われるポジションを作る』みたいなことをいう人ですね。最近だと、2chのひろゆきさんの『働き方完全無双』は面白かったです。ニコニコ哲学の川上量生さんとか。ヒモっぽくて頭のいい人の本を定期的に摂取するようにしています(笑)



面白いですね。
20歳の自分にアドバイスできるとしたら、何と声をかけますか?

当時は女性であることのハンデばかり考えていたのですが、時間がたってみると、そうとも限らないなと思うようになりました。例えば今人生100年時代で、世の中が「常に学び続けましょう」という風潮になってきました。色々なキャリアを積んできたことが変なことでなくなり、「時代が私に追いついてきた?!」と感じます(笑)。女性でまっすぐなキャリアパスを描けないことの相談を受けることがありますが、様々なキャリアの変遷が役に立つ時代になるかもしれません。常識の変化は自分の意図しないところで起こるので、今の流れが自分にしっくり来なくてもがっかりすることはないということを伝えたいですね。今の状況がすべてではないですから。



なるほど。こう言ってもらえると救われる人がたくさんいるでしょうね。穂積さんの専門だと思いますが、結局自殺する人は「今が全て」だと思うから自殺するのでしょう?

その通りです。どうしても視野が狭く、視点が短期的になってしまいますから。

今後はそういった人を減らしていくような課外活動もしていきたいと思っています。

貴重なお話をありがとうございます。

(撮影協力 本多佳子)