若い人たちには、スキルでなくセンスを磨いて欲しい ―橋谷有造さん
今回お話を伺って、改めて感じたのは、ご自身がとても自然体であるということ。
だからこそ、周りを心地よく包み込めるのでしょう。橋谷さんのお人柄に迫ります。

楽天生命保険株式会社 代表取締役社長 橋谷有造
HP:https://www.rakuten-life.co.jp/
-Profile-
はしや・ゆうぞう 1965年東京生まれ。1992年アメリカンホーム保険入社。2010年4月、44歳の若さで同社社長に就任。2016年6月より楽天生命保険株式会社代表取締役社長に就任。 ゴルフはプロ並みの腕前で、ハンディキャップは0。
#1 コミュニケーションが最大の武器になる。
#2 ビジネスでイニシアティブをとるのは、一番「考えている」人。
#3 自分を信じられなくなったらあと何を信じるんだろう。
今のお仕事、楽天生命さんの社長に就任されたのはいつですか?
2016年の6月です。
社長の仕事をひと言で言うと何だとお考えですか?
方向性を示すことと、決断をすることですかね。
まさにそうですよね。方向性を示すというのはどのようになさっているのですか?
部下からあがってくるものごとにdecisionを下す、その積み重ねで方向性を示す会社にしたいと思っています。そのdecisionを出すために自分からアイデアを出して「これ考えてみて」という。私に限らずほとんどの経営者がそうだと思います。
ビジネスって誰がイニシアティブを取るかと言うと、一番考えている人がイニシアティブをとる。考えている人は、絶対に、考えていない人には負けない。逆に、考えていない人は考えている人には絶対に勝てない。
考えるっていうのは、どうやって考えてらっしゃるんですか?
「会社を一歩出たら、仕事のことは一切考えない」っていう人いるじゃないですか?僕はずーっと考えてますよ。ゴルフをやっていても、ずっと考えています。
ゴルフのときもですか?それはすごいですね。
考えてる。考えてる。一個一個を細かくではないけれど、会社をこういう風にしたいという「理想」は、ゴルフをやっている間もずっと考えていますね。
そうですか。橋谷さんはゴルフにすごく真面目じゃないですか。ゴルフのときはゴルフのことだけを考えてらっしゃるんだと思っていました。
そうであれば、もう少しうまくなっているかな(笑)
いやいやいやいや十分お上手じゃないですか。ハンデ0で試合にまで出場されて。
ちなみに、生命保険の業界に入られたのは、社会的な意義を考えてのことですか?
社会的意義は勿論大きいです。それに、そもそも世の中から保険が消えると世の中が回らなくなるので、業種としても間違いなく「なくてはならない」ですからね。
ちなみに楽天生命さんに入られた理由は何ですか?
楽天である意味のようなものがあるように思うのですが。
楽天でなければ、保険はやってなかったかもしれないですね。入ってからもなお感じたけれど、楽天ってやっぱりものすごいアセットを持っています。お客さまのメンバーシップであったり、70を超えるサービスがあって、この楽天経済圏の中というのは本当に良くできている。
経済圏と言うのは?
国内だけでも会員様が9000万人ほどいらっしゃるんですよ。その中で銀行、証券、カード、生命、市場、トラベル、と色々あって、お客さまは楽天の中だけですべての用が足りるんです。
要するに、太平洋の真ん中に釣り糸を垂らしても広すぎて魚は釣れませんからね。でも東京湾ならまだ釣りやすそうじゃないですか。楽天という名前の会社だからこそ喜んでくださるお客さまに向けて販売するのと、全然知らない名前の会社が販売するのとでは、大きく違いますね。
話は変わりますが、橋谷さん、子供のころはどんなお子さんでしたか?
どうだったかな。活発だったけど、あんまりできた子ではありませんでしたね。一生懸命勉強して良い成績だったという子ではなかったです。
少年時代、何か夢中になったものはありましたか?
これだね(野球の素振りのまね)。
野球少年だったのですね。
親御さんにはこんな子に育てたいというような教育方針はありましたか?
ほぼ、全くと言っていいほど、なかったです。ですが過保護で心配性でした。その過保護が嫌で嫌でね。まあ、心配性の表れだったのでしょうけど、小さい頃それが嫌でした。
その頃なりたかった職業はありますか?
僕らのころはみんなプロ野球選手ですよ。サッカー選手なんて言葉はない時代でしたから(笑)
普通の男の子だったんですね。
そうです。ごく普通の男の子でしたよ。
小学校のころから会社の社長になりたいとか言ってたら、なんて夢がない奴じゃない?(笑)
なるほど~。これまでのお仕事の中で思い出に残る上司はいらっしゃいますか?
前職で僕が平社員だったころの上司ですごく印象に残っている人はいます。その人は僕の好きにやらせてくれました。彼は僕のコミットメントを汲んでくれていた人だと思うのですが、それはまあ、自由にやらせてくれました。
おいくつくらいの時ですか?
僕が20代後半のころです。入社してすぐにはその良さがわからなかったんですよ。入って一、二年経った頃からかな、その人がとても自由にやらせてくれていると感じるようになったのは。
その方の言葉で印象的なものはありますか?
「全ての物事は自然体で考えた方がいい」です。自分の意見を押し付ける人ではなかったですね。自然体という言葉がなんでそんなに印象的だったかというと、僕自身「何でアメリカに行ったの?」「何で帰ってきたの?」と聞かれても、明確な理由があるわけじゃなかったからです。そのときは行きたかったし、少し経てば帰りたくなった。自分がどういう風に思うのか、何を考えているのかという自分の気持ちを自分では大切にして生きてきたのですが、この人も「仕事をしていても嫌なものは嫌だし、嫌なものを無理やり好きになろうとすると、本来そこまで嫌いではなかったことまでも嫌いになってしまう。もちろん仕事だからある程度やらなきゃいけないこともあるが、自然体で肩の力を入れずにやったらいい」とアドバイスしてくれたんですよね。この人とは今もお付き合いがありますよ。
素敵な上司ですね。
橋谷さんの人づきあいのこだわりはありますか?
人付き合いは大切にしています。基本的には好きな人たちと遊びますけれど、情報を得るとか、あと将来何があるかわからないという考えからすると、今一つ苦手だなと思う人とも付き合うようにしています。苦手だと思っていても、角度を変えて見ると、信頼に値する人物なのかもしれないから。
(撮影協力 本多佳子)
#1 コミュニケーションが最大の武器になる。
#2 ビジネスでイニシアティブをとるのは、一番「考えている」人。
#3 自分を信じられなくなったらあと何を信じるんだろう。