学者の特権~“面白い”の追求―入山 章栄さん

力を入れるとこと、力を抜くところ、その両方を兼ね備える抜群のバランス力。こんな生き方をしたいと憧れます。
たくさんの名言もいただきました。周りの人全てを魅了する、人たらしの入山先生インタビュー最終話、お楽しみください。

早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授
専門分野:経営学
入山 章栄さん
HP:https://www.waseda.jp/fcom/wbs/faculty-jp/6072
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。
三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。
同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。
2013年から現職。Strategic Management Journalなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。
近著に「世界標準の経営理論」(2019年、ダイヤモンド社)がある。
次やるとしたらどんなことに興味がありますか?
世界で誰もやっていないことです。現在はハーバードビジネスレビューの連載をやっていますが、普通、学者は経営学の中でも狭い特定の分野と向き合って一生を過ごすのですが、私にはそれができない。ですが、全てを網羅した経営理論の連載をやってみようと思い、始めてみたのがハーバードビジネスレビューの連載です。この次は学問全部でやってみたいですね。これは世界で誰もやっていないことです。
それは楽しそうですね!
優秀な人って何が違うと思いますか?
パッションがあることと、常に行動していることじゃないでしょうか。あとは人間的に素晴らしいことです。
人間的に素晴らしい要素は何ですか?
その人を応援したくなるかどうか、ですかね。
なぜ応援したくなるのだと思われますか?
それがわかったら苦労しないかな、、、でも自分の弱いところや本音をちゃんと開示してくれると応援したくなりますよね。
なるほど、、、示唆にとんだお話ですね。
時間、お金、人付き合いのこだわりはありますか?
こだわりはあまりないのですが、時間もお金もとてもルーズです(笑)ケチケチして自分に無理させるよりは、今は忙しいのでタクシーに乗りまくって身体を休めるようにしています。基本、あまり何も深く考えていません。人付き合いは、可能な限り自分と離れた人に会うようにしています。メディアで対談の仕事を引き受けるときも、なるべく私が知らない人に会いたいなというのは常にあります。NewsPicksというメディアでありとあらゆる「私が知らない学問分野の研究者」との対談をしていましたが、それはいつもとても面白いです。
ありがとうございます。優先順位はどうつけられますか?
好きとか嫌いとかの感覚です。直感が一番大事です。それが腹落ちです。腹落ちに理由はないですから。自分が納得しないものを続けても意味がないので、その感覚は大事にしています。
迷うことはありますか?
ありますよ。迷って決められないこともあります。迷って決められなくて適当に決めます。
適当?
一生懸命考えて、最後は適当という名の勘です。
どこで悩むのですか?
ずっと悩んでいます。そんな時は何をしていても、どうしようかなと考えています。人間は脳と身体が繋がっているので、そんな時は大学周辺を歩いたりします。
先生にとって幸せとは何ですか?
幸せが何かというのは難しい定義です。私個人は面白いことをやっている時が幸せです。日常生活ではだらだらしているのが好きなので、日曜の昼の何もしない、だら~とした時間とかは幸せですね。平日の昼間に白ワインをオープンテラスのお店で飲むとか、深夜にどこかのビストロで赤ワインでも飲みながら、友人とだらだらとどうでもいい話をして過ごすのは至福ですね。あとは子供の寝顔を見た時とか。
それは幸せですね。
人生の中で大切にしていることは何ですか?
大切なものを大切にすることじゃないですか?自分が好きなこと、譲れないもの、その感覚を大切にすることです。
自分のことを理解していないとできないですね。座右の銘はありますか?
人生行き当たりばったり!と思って生きていますが、最近好きな言葉は、ゴーゴーカレーの宮森社長に教えて貰った「創造性は移動距離に比例する」です。いい経営者はめちゃくちゃ動いています。行きたいと思ったところにパッと行ける人で在りたいです。
疲れたりへこんだりすることはありますか?どうやって解消しますか?
いっぱいあります。飲んで寝る!たまに意図的に元気な音楽を聴く。基本飲んで、寝ます。
飲んで寝ると嫌なことを忘れるのですか?
忘れなくていいんじゃないかと思うんですよ。それも貴重な経験ですから。自分を客観視できるようになったので、「あ~今すごくへこんでるな」「この時間も大事だよな」って。へこむことも結構ありますが、それも楽しんでいます。
なるほど~。名言です。
野望はありますか?
野望ですか?野望が無くて困っています。やってみたいことはあるのですが、それが何かの野望のためというよりは、ただ知りたくてやるのだと思います。今は知の体系化を作りたいと思っていて、実際にそのプロジェクトは動き始めています。
趣味はありますか?
良く聞かれるのですが、実は趣味が無いのです。自分がやっていることが好きだから、仕事と遊びの境界線が無くて、やっていることが趣味なので、好きなことしかやっていません。それでお金をいただけているので、ラッキーですね。学者の特権です。仕事が趣味です。
若い頃のご自分に声を掛けてあげるとしたらなんて言いますか?
「そのまんまでいいんじゃない?」です。過去自分に起きたことは、失敗もたくさんありますが、後悔はないです。まあ、あの頃もっとまじめに受験勉強していればとか、あの頃もっと真剣にやっていればとか、振り返ればありますが、振り返ってもしょうがないじゃないですか。過去に興味がないんです。ですから同窓会に行く意味もあまりわからない(笑)。僕は同窓会を否定しないし、誘われたら行くこともありますが、基本あまり興味ないんですよ。そこで集って過去を懐かしんでも仕方ない。未来を語る人と一緒にいた方が、よほど楽しいですからね。
大変共感します。未来を語る人は素敵ですよね。
貴重なお話をありがとうございました。
撮影協力 本多佳子