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CONCEPT -Think&Talk-|学び続け、進化し続けるビジネスマンに向けて、さまざまな業界のトップリーダー たちと仕事観を語らう。

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「周りを幸せにすること」と「自分としての痛快感」。僕は、この二つで仕事をしています。―足立 光さん

【第2話】仕事を楽しめない人は かわいそうだなと思う。
2017年08月17日

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巨大外食チェーン、マクドナルドのV字回復を支えた立役者、足立光氏。そのとき、何を考え、何を実践したのか。ビジネスマン必見、必殺仕事人の仕事術をおうかがいいたしました。第2回をお送りいたします。(全4回)

足立光

日本マクドナルド株式会社 上席執行役員 マーケティング本部長 足立光さん

HP:http://www.mcdonalds.co.jp/

-Profile-


一橋大学商学部卒業。P&Gジャパン(株)マーケティング部に入社し、日本人初の韓国赴任を経験。ブーズ・アレン・ハミルトン、及び(株)ローランドベルガーを経て、ドイツのヘンケルグループに属するシュワルツコフヘンケル(株)に転身。2005年には同社社長に就任。赤字続きだった業績を急速に回復した実績が評価され、2007年よりヘンケルジャパン(株)取締役 シュワルツコフプロフェッショナル事業本部長を兼務し、2011年からはヘンケルのコスメティック事業の北東・東南アジア全体を統括。(株)ワールド 執行役員 国際本部長を経て、2015年より現職。

 

#1 マーケターから再建請負人、再び人の心を動かすマーケターへ。
#2 仕事を楽しめない人は かわいそうだなと思う。
#3 自分の名前がブランド。だから結果にはこだわる。
#4 コントロールできないことでは悩んだり、へこんだりしない。


様々な会社や立場を経験されてきた足立さんですが、仕事での一番の失敗談というと何を思い出されますか?

これはいっぱいありますが、大体の失敗に共通していることが、「感情」で決断したことです。
例えば同じシリーズの新製品が二つあって、一つ目の新製品を発売したときは、二つ目もすでに当然準備していますよね。それで一つ目の新製品の売れ行きが順調ではないけど、「もう準備しているから、二つ目も発売させてくれ」と担当者に懇願されて、承認しちゃいました。すると大失敗で、大損失。本当はそこで、「発売しない」と意思決定するべきだったんですが、「みんな頑張ったんだから、出しちゃえ」という意思決定をして失敗してしまいました。基本的に義理・人情・浪花節(いわゆるGNN)は大切なんですけど、仕事の意思決定に感情は入れてはいけない。ただ、それがなかなか徹底できずに、何回も痛い思いをしています(笑)。

いつも冷静で合理的な判断をしていらっしゃるように見えますが。

そうですね、基本的にはいつも一歩引いている感じで、さらにそれを横から見ている自分もいます。僕は新しいことや必要なことは何でもしますが、いわゆる「我を忘れて夢中になる」ことはないですね。たとえば子どもの頃、アイドルというのが全然理解できてなくて。何でみんながそんなに夢中になるんだろうと。そのレコード買って、コンサート行って、あのアイドルに貢献して、なにか意味あるの?というように、誰かのファンであることに全くメリットを感じませんでした。なので、アイドルも野球チームも、みんなが熱中するから熱中する、ということはない冷めた子供でした(笑)。

みんなが熱中するとか関係なく、今、夢中なものってありますか?

うーん、ずっと仕事が趣味なんですよね。マーケティングもそうですけれど、すべての仕事は、なにか目的や目標があって、それに対していろんなことをやってみるという、「信長の野望」のようなシミュレーションゲームとほぼ一緒なんですよね。ちょっと失礼な言い方ですが、自分にとって仕事は、お金をもらって壮大なゲームをやっているというイメージなんです。なので、自分にとって仕事が最高に面白い趣味なので、ほかに夢中になることはないんです。

最大のゲームを日々やってらっしゃるっていうことですね。
私の中では、足立さんは仕事しているか、飲んでいるかっていうイメージですけど。(笑)

飲んでいるのも、実は仕事なんですよ、自分の中では(笑)。よく不思議がられるんですけど、仕事と仕事じゃないことの境界がないんです。平日と休日、といったコンセプトも、ほぼないんですよ。ずーっと仕事しているし、ずっと休んでいるし。勤務時間でも3時間もし空いていたら、映画を観に行くかもしれません。あんまりそこの境目が、昔からないかも。
P&Gのときも、2時間昼休みとって、六甲アイランドのゲーセン行っていたんですよ。自分はバーチャファイターが結構強かったんで、並み居る中学生とかですね、土方のお兄ちゃんをなぎ倒していたんですけど。そのうちゲームセンターに「足立様~足立様~上司の堀様からお電話です」って流れたりして(笑)。でも、あんまり文句は言われませんでしたね、仕事はきちんとしていたから。

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大変面白いです。私もそうですが仕事の境目があんまりないタイプと、プライベートときちんと分けたいタイプがいらして、後者のタイプの部下の方もたくさんいらっしゃるのかなと思うんですけど。そういう人たちに対してはどうされているんですか?

それはその人の価値観なので、いいんです。ただですね、仕事を楽しめない人はかわいそうだなと思います。自分は「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がすごく嫌いで。

私も好きじゃないです。

実際、一日のほとんど、仕事しているわけですよ。8時間、10時間としているわけで、それが楽しくなかったら、人生、ほんと楽しくないと思います。
あと、どんな仕事でも、会社でも、その長い短いはともかく、期間限定ですよね。でも、友達って一生なんですよ。だから自分は友人というか、大切な人と会うことを、明らかに仕事より優先しています。「仕事が忙しいから、晩御飯行けません」とか言っていたら、一生行けないので、晩御飯行って、帰ってから仕事するということが普通にあります。

私は素敵だと思いますね。でも、それが普通はなかなかできない。

それは「できない」のじゃなくて、「しない」という選択ですね。ほとんどの選択肢は自分で決められるので、実は本当に「できない」ことって、あんまりないはずですよね。「仕事が忙しいから、会えません」っていうのは、「仕事のほうが、あなたに会うより大事です」と言ってるのと同義です。自分は絶対、それはしない。

勉強になります。では、今は何のためにその仕事をしていますか?

自分にとって、やりがいは二つあるんです。まず大学のときに「あなたは何のために生まれてきましたか」という課題を与えられて、考え悩んだすえ「周りの人を幸せにすること」って答えているんですよ。今のマクドナルドでの仕事は、関係している人、まさに「周りの人」が多いんですよ。

そうですよね。あらゆる方がお客さんですよね。

お客様は、一日200〜300万人いらっしゃいます。加えて、アルバイトやフランチャイズの皆様も含めて、スタッフが13万人くらいいるじゃないですか。その他にも、サプライヤーさんとか、エージェンシーさんとかも、大勢の方がマクドナルドを支えて頂いています。マクドナルドのビジネスが良くなれば、この皆さん全てが幸せになる。これはね、とてもやりがいがあります。

もうひとつは、人ができないこと、できなかったこと、または初めてのことをやることに、とても喜びを感じてます。過去に在籍した会社でも、新しいプロジェクトやテストに携わりましたし、経営幹部としてもコンサルタントとしても、いろんな再建を担当しました。誰もやったことのないプロジェクトを成功させたり、数年間業績が落ち続けて赤字だった事業や企業が立ち直ったら、それはかなり痛快じゃないですか。その二つですよね。「周りを幸せにすること」と、「自分としての痛快感」、その二つでやっている感じですよね。

でも、足立さんがいらしてから本当に業績が伸びていますよね。

皆様のおかげで、6月終わって、18ヶ月連続の二桁成長(売上前年増は19ヶ月連続)になりました。この好調を少しでも長く継続できるように、毎日ピリピリしてます。本当に、かなり必死です。

2桁成長を1年半もですか!それに、一年経ったら、昨年の数字も自分の数字ですからしんどいですよね。

去年も20%伸びている翌年の今年、また二桁、売上を伸のばすって、なかなか大変なことなんです。しかも、ベンチャーならともかく、4000億の規模の会社で、毎月二桁成長を追っている会社もそんなにないでしょう。最近までは、メディアで「マクドナルドは再生したか?」というように、「か?」がつく記事が多かったんですが、さすがにそろそろ「か?」が取れると思うですよ、いろんな記事から(笑)。

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ちなみにこの成功の秘訣は・・・。ひとことではおっしゃれないとは思うんですけど。

運がいいことです。

その運はどうやって引き寄せてらっしゃるんですか?

引き寄せているわけではありませんよ。そもそも、マクドナルドでは、お客様にご来店頂いても、店舗体験にご満足いただかなければ、再度、ご来店頂けません。実は、改装やサービスレベル改善を含む店舗オペレーションの改善が、自分が入社する前にずいぶん進んでいたんです。お客様にご来店して頂ければ、満足して頂けるという土壌がすでにある程度できていたんですよ。
自分の仕事は、店舗にお客様を呼んでくることなので、もし自分の入社が店舗のオペレーションが改善されてない3年前だったら、自分は全く機能しなかったかもしれません。タイミングって、とても大事だと思っています。
もうひとつ、タイミングという意味では、数年間、業績が落ち続けだったので、何か新しいことをしなくては、という雰囲気が社内にありました。それで、こんな自分のような比較的「飛び道具」的な人が、機能したわけですよ。ある有名なコンサルタントによると、自分は「劇薬系」らしいです。「劇薬系」というのは、すごく効くかもしれないけど、処方を間違うと死んじゃうかも、という意味らしいです(笑)。

第2回は、仕事と人生について語っていただきました。淡々と事実ベースでお話しされ、感情に流されないさまに、感動を覚えました。次回は仕事のクオリティへのプライドと、時間の使い方ついてお話いただきます。お楽しみに!

#1 マーケターから再建請負人、再び人の心を動かすマーケターへ。
#2 仕事を楽しめない人は かわいそうだなと思う。
#3 自分の名前がブランド。だから結果にはこだわる。
#4 コントロールできないことでは悩んだり、へこんだりしない。