「IT前提経営®」―高柳 寛樹さん

どのお話からも、心や身体と対話しながら生きていらっしゃるのを感じます。リフレッシュは意外にもシエスタ。
そのギャップが高柳さんの魅力の一つだと思います。憧れの白馬でどのように過ごしていらっしゃるのかもお聞きしました。
最終話お楽しみください。

株式会社ウェブインパクト
取締役ファウンダー
高柳 寛樹さん
HP:https://www.webimpact.co.jp/company
立教大学准教授(特別任用/2019年度~)、 ガーディアン・アドバイザーズ株式会社パートナーなど
1976年、東京生まれ。長野県白馬村(指定特別豪雪地帯)在住。 立教大学社会学部社会学科卒業後、同大学院・社会学研究科社会学専攻・博士前期課程修了。(修士・社会学)。大学入学後、はじめてインターネットに出会い、大学院修士課程1年目に株式会社ウェブインパクトの前身である、株式会社ウェブハット・コミュニケーションズを創業。近年は「IT前提経営®(Tech Driven Management)」の提唱者として企業経営への適切なテクノロジーの導入についての講演や助言に力を入れる 2002年から、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科で教鞭をとり2019年度からは准教授(特別任用)。4歳の時にエレクトーンをはじめ、同時に、作曲コンクール作品を書き始めるなど、幼少期より創作活動をはじめる。高校3年の頃から、ゲーム音楽をはじめ、テレビ番組や演劇、アーティストに楽曲を提供したり、クラシック音楽の編曲等も行い、作曲家・編曲家の一面も持つ。日本アーティスト協会正会員。 近著に『まったく新しい働き方の実践~「IT前提経営」による「地方創生」~』(ハーベスト社)
#1 脳みそだけで戦える、ITでの学生起業
#2 中学2年で死にかけた私の決意
#3 迷わないように自分を設計する
人付き合いはあまりしませんので(笑)、時間は有限ですから、スキーをするときも仕事はしています。パソコンがあれば私の仕事はできますから、リフトの上でもスマホでしています。
本当ですか?
白馬、八方尾根にカフェがあるのですが、そこにパソコンを持って上がり、そこで仕事をして、パッと晴れてくると、滑りに行きます。そのスタイルを地元のメディアが取材してくれたのですが、要は時間の有効活用です。
スキーしながら仕事をしていると、「遊んでんじゃん」と言われたりしますが、たばこを吸いに行く人もいるじゃないですか。それと同じですよ。リフトが動いている朝8時から3時までの間の一番いい時間って、数時間しかないのです。その時間のために、環境を整えるということをやっています。
パソコンを山の上のそのカフェに置いておくのですか?
朝、持って上がって、滑るときはロッカーに入れておく。それを何回もやりつつ、最後4時半のゴンドラで降りてきます。電源はお借りできませんから、それを確保するために大きなバッテリーも持っています。
どうですかね。結局は経営者ですから、遊んでいるように見えますが、24時間の中に仕事と遊びが混在しているのです。今年はおかげさまでスキーリゾートのお仕事もいただきました。
残念ながら日本のスキーリゾートのIT化は遅れています。そこを助言させていただいたり、開発させていただいたりと、そこでの仕事もしています。ただでは起きません(笑)
(笑)流石です。お金に関してはどうですか?お金はこれに遣いたい、またこれには遣いたくないなどありますか?
実は車が好きなのです。スキーもマテリアルにお金がかかります。そういうマテリアルがあるものが大好きで、私はオタク系趣味と呼んでいます。そういうところには無尽蔵に使いたくなりますね。田舎に暮らす理由は駐車場が広いこともあります。
優先順位のつけ方のこだわりを教えてください。
睡眠時間をとることです。連続6時間、プラス昼寝の時間は確保したいです。
毎日昼寝されるのですか?それはどこでされるのですか?
忙しいとさすがにできませんが、結構昼寝はしています。自宅や、大学の研究室です。フルフラットになる椅子で寝ています。
幼児のような生活ですね(笑)
高柳さんはやらなければいけないことがたくさんおありじゃないですか。それのどこから手を付けているのですか?
仕事は、先方があることですので必ずします。私が前面に出て仕事をしないといけないことももちろんありますが、大抵はそれぞれに権限を持たせて進めてもらい、何かあれば出ていきます。ですから仕事以外の優先順位は、昼寝、スキー、ピアノを弾くことです。
できるビジネスマンは何が違いますか?
お金が好きなんじゃないですか?お金か名誉欲があるのじゃないですか?でもこれってとても重要なことです。そうでないと社会は回っていきませんから。
そういう風になりたいと思ってもできる人とできない人が居ると思いますが、その違いは何だと思いますか?高柳さんが尊敬する人は何が違いますか?
それはやっぱり命をかけていますよ。
私が尊敬する現代の政治家のひとりが、国会の暴言王と呼ばれている日本維新の会の足立康史さんです。彼は懲罰動議を戦後の議員の中で一番多く受けています。ストレートに本当のことを言ってしまう。要は命をかけて話をしていると感じるのです。ソフトバンクの孫さんも、命懸けだなと感じます。私はそこまでやろうと思わない、自分の身の回りのことでいっぱいいっぱいです。ですから、そういうリーダーを見ると、ただただすごいなあと思います。
高柳さんの、そこまでやろうと思わないとおっしゃいましたが、そこまでの懸けている人はほんの一握りですよね。もう少し手の届くリーダーの条件は何ですか?
やっぱり優しいことじゃないかな。
どういう優しさですか?
人の気持ちがわかることですね。優しくないとできるリーダーにはなれないと思います。
大学の世界でも同じですが、例えば私のつける成績一つで留年が決まる学生がいたとします。その時私は合格点をつけて卒業させることはできます。でもそこで考えますよね。このまま社会に出していいものかどうかの葛藤です。私は学校の先生を大変尊敬しています。レポートも全てAを付けることは簡単です。けれど時間をかけて読んで評価する。自分が面倒な思いをしてまで、D(落第点)をつける優しさということです。もちろんそこはプロフェッショナリズムですが、やらなくたって給料は貰える状況でやる。そこは優しさであり、尊敬すべきリーダーだと感じます。
私は学生の立場になってしまうので、DじゃなくてCを付けてほしい!って思ってしまいます(笑)
迷ったらどう選びますか?そもそも迷うことありますか?
実は私は地図が読めなくて方向音痴なので結構迷いますが、物事で迷うことはあまりありません。
恐らくあの中学の時の生死を考える経験をしてから、やりたいことしかやっていないのです。ですからそもそも迷うことがないです。
先日白馬村に家を建てましたが、土地を買ってから家が建つまで10か月で出来上がりました。最短だそうです。それは、迷うことが少なかったからです。信頼できる建築士に全てA、B、Cで提案してもらいました。「ここはA、次はB、、」と瞬時に決定していきました。要は自分で迷わないようにしているのです。迷っている時間がもったいないですから。迷わないように設計しています。道には迷うのですがね(笑)
高柳さんにとっての幸せとは何ですか?
んんん~何だろう。先ほどもお話ししましたが、中学で寝たきりの時がありました。その時下半身不随になる可能性も通告されていますから、ただ歩けること、運動できることが幸せだと感じますね。例えば、若いころ2.0だった視力が、老眼になってきています。スキーもちゃんと時間を区切ってやらないとガタガタになります。
若いころは当たり前だったことが当たり前じゃなくなる、これからどんどんそういうことが増えてくると思います。ということは今ある状態そのものが幸せなんだと思いますね。
座右の銘はありますか?
「秀才でなく異端であれ」
秀才と呼ばれる人は多くいますが、異端児と呼ばれる人はそういない。
なぜ異端でありたいのですか?
そういう人が出てくるから世の中に変化が起こります。イーロンマスクが現れたから電気自動車が広まりましたよね。去年大学院のゼミで「アントレプレナーと詐欺師の違いを論理的に説明せよ」というのをやりましたが、違いがない。最後の最後脱法性があるかないかです。
利他っぽいのがアントレプレナーで、利己っぽいのが詐欺師だというイメージです。
アントレプレナーは合法的に迷惑をかけられる仕事です。例えば、イーロンマスクはあまりに「顔芸」がうまかったので、一般投資家は大損しているにも関わらず、更にそこに投資するということがありました。これが詐欺と何が違うのだろうと、真剣に考えました。
体調管理はどのようにされていますか?疲れることはありますか?
あります。私はお酒を飲まないので肝臓は悪くないとは思いますが、肝臓にターボをかけるようなものを食べるようにしています。肝臓の脂肪を水溶化するようなものを取っています。ウコンとかをとるようにしています。臓器を元の状態に戻すということです。
スキーをしていますので冬になると筋肉を付けますがそれは絶対に駄目だとわかりました。とにかくダイエットをした方がいいのです。筋肉をものすごくつけるよりも、10キロダイエットした方が圧倒的に怪我が少なくて体力が持ちます。
なぜですか?
スキーは遠心力のスポーツです。ずっと踏ん張っているので、軽い方がいいのです。3キロ痩せると可動域が15%増えるそうです。ですから、ストレッチもしますが、まずはダイエットです。
へこむことはありますか?
ありますよ。そうしたら寝ます。だから寝ているのかもしれません。シエスタとまでは言いませんが、30分ほどの昼寝はそういった切り替えにも繋がっていると思います。
とっておきの場所はどこですか
長野県白馬村です。
読者の皆さんに何か一言、お願いします。
あ、本を出版しました。これを読んでいただきたいです。
「まったく新しい働き方の実践」
https://www.amazon.co.jp/まったく新しい働き方の実践-「IT前提経営」による「地方創生」-高柳-寛樹/dp/4863390866
どんな方に読んでもらいたい本ですか?
万人に!働き方について書いている本ですから、どなたにも読んでいただきたいです。
毎朝9時から夕方6時まで働き、満員電車で通勤するといったマニュピレート(操作、操る)、コントロール、監視監督されているところから、抜け出したい人に読んでもらいたいです。私も社員もそういうところから抜け出してほしいですから、出勤義務はありません。
今までの労使関係においては、マニュピレートからは抜け出せませんが、IT前提経営®になれば、抜け出すことができます。
貴重なお話をありがとうございました。
(撮影協力 本多佳子)
#1 脳みそだけで戦える、ITでの学生起業
#2 中学2年で死にかけた私の決意
#3 迷わないように自分を設計する