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人生を一人で完走しようとしない、うけついだバトンを次に託すだけ―細川晋輔さん

【最終話】迷ったときは変な気休めはせずに本当に迷ってみる
2017年10月05日

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先日ふとテレビをつけると、細川さんが生出演されていました。細川さんから聞く禅問答は深く心に染み入りました。
最終回も生きていくうえでのヒントや子育て世代にも参考になるお話が満載です。

細川晋輔

臨済宗妙心寺派龍雲寺 第十二代住職 細川晋輔さん

HP:http://ryuun-ji.or.jp/

-Profile-


臨済宗妙心寺派龍雲寺第十二代住職。 1979年、東京世田谷生まれ。2002年佛教大学人文学部仏教学科卒業後、京都にある妙心寺専門道場にて9年間の禅修行。花園大学大学院文学研究科仏教学専攻修士課程修了。妙心寺派布教師。NHK大河ドラマ「おんな城主直虎」禅宗指導。

 

#1 修行は何かを得た9年というよりは、もう捨てまくった9年でしたね。
#2 坐禅は心の句読点
#3 僕にとってお坊さんは道楽です!
#4 迷ったときは変な気休めはせずに本当に迷ってみる

時には疲れたりへこんだりすることってあると思うんですけど、そういうときにどうやって立ち直るんですか?

目の前のひとつのことだけに集中しようと思いますね。
例えば法事にしても、こういう取材とかにしても、例えば家族とどこか行くにしても、悩みや疲れがあるときは、とりあえず目の前のことだけに集中します。

いろんなご予定があると思うんですけど。何もないときは?

ないときは本に集中したりします。とりあえずひとつのことに集中するっていうのは僕らの中では「無心」という世界なので、できる限りやります。あと片付けもいいです。
心の中に何か嫌なことがあると、ひとつのことだけに集中することでそれが中から膨らんでいって嫌なことを押し出したり寄り切ったりするんですよね。
もうひとつ効果的なのは呼吸に集中することですね。呼吸の数を数えていくというのは坐禅の考えなんで、それをしたりしますね。

非常にわかりやすい。ありがとうございます。ちなみに迷ったときはどうされるんですか?

迷ったときは、とことん迷ってみるというのも大事にしています。変な気休め的なことはしないで、本当に迷ってみる。そして自分と向き合ってみる。やっぱり人から指し示しめられた答えって後で絶対後悔しちゃう。大河で指導のお話を受けたときも、たしかに芸能人に会いたいとか(笑)ないと言ったら嘘になりますが、実際には自分も時間を失うし、やはりお寺の世界からも批判的な意見もあるし、リスクはたくさんある。なのでかなり迷いました。今回のお話は、指導している周りは皆さん文化勲章級の方々で、正直自分にはまだ若すぎるというのもありましたしね。そんな中で父が独眼竜政宗という大河の指導をしていて、そこに対して憧れがある。ビデオを買って家族で正座して父の名前を見てたという記憶があり、自分の中で将来一回はやってみたいという思いがありました。
さんざん迷った末、お引き受けしました。すると本当に勉強になることの方がたくさんあり、やはりいろんなことはチャレンジしてみるべきなんだなと思いました。
まあ、昔から、やらないで何か言うよりもやってみてからあきらめる人間でありたいと思っていました。結果駄目だったとしても「生きててよかった」と思えるでしょう。

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なんか勝手にわれわれ一般人はお坊さんというと、ちょっと雲の上の人だという感じがして、完璧な人だと、怒らないんだろうなとかそういう風に思ってる節があるんですが、今日色々聞いて誰よりも人間らしい人なんだなって(笑)

まあ、怒りますしね(笑)。ただ、怒ったのは引きずらないというのは意識していますがね。

どなたか影響を受けた人っていらっしゃるんですか?

私の修行の師匠なのですが、修行を40年くらいされた禅僧で、超能力が欲しくてお坊さんになられたすごい方です。

超能力?

その方が言うには、「実は超能力は空を飛んだり人の心を読んだりするだけじゃなくて、こうやって君と話したりお茶飲んだりするのだって超能力なんだ」って。すごいこと言うなって思いましたよ。

どういう意味なんでしょうか?

例えば僕が和佳子さんとお茶飲んでるって言うのも実はすごい奇跡的なことなんですよ。例えば僕の両親が出会ってなければとか、信号1個先わたってれば出会わなかったとか、そういう超奇跡的なところに僕らはいるんだということです。
お茶一杯いただくのも、すごい奇跡の上に成りたっているんだと立ち返ることが修行ってもんなのかなと学んだんですよね。
そう考えるとちょっとした出会いも大切にいとおしく感じて、生きるに値するのではないかと思うんですよね。

そうするとみんな楽しい人生になりますよね。

それに皆さんが気付くっていうだけなんですけどね。奇跡的な大発見!!っていうんじゃなくて、今まで当たり前にしていたことに再び目を下ろすだけなんですよね。これはヒマラヤのてっぺんに行かないと見れない景色でもなくて、ちょっと止まって考えてみれば誰もが気づけることであるというのがすごくいいところなんだろうなと思うんですよね。

それこそ、私たちには同じくらいの子どもがいるじゃないですか。子育てをしていて、やっぱり「育ち」なんじゃないかなと思うところが結構あって、とはいえ「気付ける」っていう才能を今から授けるって難しいんじゃないかなって。

ん~後はなんというか、機会(チャンス)じゃないですかね。出会いだと思うんです。だから失礼な言い方をすると、お宅にお経をあげに行くと靴を揃える子の親ってみんな揃えてたり、仏壇で正座してチンとやる子の親はちゃんとやってたりするんで、子どもがそういうのをやっているのを見ると親もやってるんだなと思うんですよ。子どもは「言ったことはやんないけど、やってることはやる」。自分にとっては反面教師ですが、言葉で育てるより自らの行動でということが大切なことだなって思うんですよね。

ちょっと自分を省みますね。ありがとうございます。
これからどんなふうに仏教を伝えて行きたいとお考えですか?

まあ色々やってきましたが、一度ちょっと落ち着いて、お寺らしいことをしたいと思っています。坐禅とか話とかというのをもっとメインにして、やっていきたいなと思っています。

話っていうのはどういうのですか?

「法話」というんですが、仏教の話をどれだけわかりやすく伝えることができるか。
僕は三本柱ってよんでるんですけど。坐禅と、法話と、写経です。

私、興味があります!そういう本業のほうに興味がある人結構多いんじゃないですか?

本業以外の方法を色々と取り組まれている方もいますが、僕は本道で勝負していきたいですね。今はその三本柱を大切にしたいです。

素敵なお話でした。今度ぜひその三本柱に参加させてください。ありがとうございました。

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(撮影協力:本多佳子)

#1 修行は何かを得た9年というよりは、もう捨てまくった9年でしたね。
#2 坐禅は心の句読点
#3 僕にとってお坊さんは道楽です!
#4 迷ったときは変な気休めはせずに本当に迷ってみる