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CONCEPT -Think&Talk-|学び続け、進化し続けるビジネスマンに向けて、さまざまな業界のトップリーダー たちと仕事観を語らう。

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若い人たちには、スキルでなくセンスを磨いて欲しい ―橋谷有造さん

【第1話】コミュニケーションが最大の武器になる。
2018年02月01日


共通の友人の紹介で初めてお会いしたのは5年前。
当時アメリカンホーム保険の社長でいらっしゃった橋谷さんと仕事の話をさせて頂くのは、とても緊張しました。
それでも、いつでも、どんなときも、相手を1人の人間として分け隔てなく丁寧に接してくださる橋谷さんは、どこでも人気者。
その人間力はどこからくるのか、全3回で迫ります。
 
橋谷有造

楽天生命保険株式会社 代表取締役社長 橋谷有造

HP:https://www.rakuten-life.co.jp/

-Profile-


はしや・ゆうぞう 1965年東京生まれ。1992年アメリカンホーム保険入社。2010年4月、44歳の若さで同社社長に就任。2016年6月より楽天生命保険株式会社代表取締役社長に就任。 ゴルフはプロ並みの腕前で、ハンディキャップは0。

 

#1 コミュニケーションが最大の武器になる。
#2 ビジネスでイニシアティブをとるのは、一番「考えている」人。
#3 自分を信じられなくなったらあと何を信じるんだろう。


今日はよろしくお願いします。橋谷さん、出身大学は海外でいらっしゃいましたよね。

アメリカのカリフォルニアですね。ロサンゼルスの田舎です。

それは、日本の高校を卒業されてからアメリカで大学を受験されたのですか?

高校を卒業して日本の大学に入る直前に向こうへ行きました。日本の大学に入学するつもりで受験もして、受かっていたのですが、なんとなくそのままアメリカに行ってしまいました。

向こうに行ってから勉強されて入学したのですか?

そのとおりです。アメリカで1年勉強してから入学しました。

ちなみになぜアメリカに行こうと思われたのですか?

なんだろうね。日本は寒いしね。まあ若い頃なんて何にも考えてなかったから、ただ単に、漠然とした憧れだったんじゃないかな。

18歳のときに何となくアメリカに行こうと決められたわけですね。向こうでは何を勉強されたんですか?

ビジネスアドミニストレーションというのだけど、経営経済学です。

これを勉強したくてされたのでしょうか?

ううん。それも何となく。勉強というものにあまり意思を持ったことがないんですよ(笑)。


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卒業した後はどうされたのですか?

卒業して、日本の小さい商社に就職しました。ただし、アメリカに行くというのが前提の就職でしたので、入社して何週間かで又、アメリカに行きました。

では、アメリカで仕事ができる会社を探してらっしゃった?

そうです。

その会社には何年くらいいらしたのですか?

3年かな?

何がきっかけで転職されたのですか?

そろそろ日本に帰りたいと思ったからです。全ては自由意志で、あまり「こうしたい!」という気の利いた理由ではないですね。日本に帰ってAIGに入ったのは26歳のときだから第二新卒みたいなものだったかな。

AIGさんには何年いらしたんですか?

23年半です。

44歳でAIGさんの社長に就任されたのですよね。
もともとAIGさんはそういう生え抜きの方をトップに据えるという会社なのですか?


そうかもしれません。当時は、外部から社長が来るっていうのはそれほどありませんでしたね。

仕事をしていくうえで大事なことって何だと思われますか?

僕は、スキルとセンスという話を(保険販売の)代理店さんの前でもよくします。とかく世の中の人はスキルに走る。手に職をつけるといって、スキルを自分の専門的な売りにする人が多い。スペシャリストは増えているけど、センスを磨こうとする人は少ないと思います。

橋谷さんにとって、センスってどういうものですか?

「経験」ですね。


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経験を元に、何があればセンスになると思われますか?

たとえば「洋服のセンスがいい」というけれど、あれも、これをすると洋服のセンスが良くなるっていうものはないじゃないですか? それよりも、今までオシャレな人をいっぱい見てきているとか、良い舞台を見てきているとか、そういう経験値から出てくるものでしょう。

仕事においてのビジネスセンスというのは、人とどうやってコミュニケーションをとるかなので、結果的にはスキルばかりを磨いている人からは、なかなか生まれてこない。つらい経験をした人こそ、センスが磨かれるのでしょう。その経験をしていることがセンスなんです。もちろん世の中にはそのセンスを使い切れてない人もいっぱいいると思いますよ。

このつらい経験や豊富な経験というのはもちろん誰しもができるわけではないと思いますが、同じような経験をしている人がいるとして、その中でもセンスになる人とならない人の違いってどこだと思われますか?

それがまた人間性なのでしょうね。生まれた環境や育った環境も関係してくるのかもしれません。同じ経験をしていても出来上がるものは違うから、その違いは僕にもわかりませんね。

それって大人になったこれからでも磨けますか?

センスは磨けると信じています。だって、「センスは持って生まれたものです」なんて言われたら、人間生まれたときにおおかた決まってしまいますから。

本当ですね。やる気なくしちゃいますね。

だいたい今、日本の89割はスキル重視の傾向にある気がします。ただ、とくに若い人たちには、それだけだと何か勿体ない気がしますね。

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スキルワーカーゆえに、AIに仕事を奪われていく……という話もありますね。みんな誰しもが今、危惧されていることだと思います。

スキルのみで成り立つ仕事だと、そのうちの50%くらいはAIが取って代わると言われています。まあ実際には、AIを運用するための人間の仕事も出来るでしょう。しかしAIによって無くなっていく業種も確実にある。じゃあどこに人が要るの?というと、たとえば営業する人というのは絶対に必要になります。そういう意味で、コミュニケーションというのは最大の武器ですね。

そんな中で、ご自身がAIGさんの社長まで勤め上げられた、そこの強みは何だとお考えですか?

コミュニケーション能力とコミットメントでしょうか。

約束をする、しないというところで言うと、よく代理店さんなどに、「人間は信頼をどうやって作るのでしょうか。」と質問されます。信頼とは約束を守ることだけれど、日本では、約束を守る前にそもそも約束をしない人が多いです。例えば「来週みんなでご飯を食べに行こう」という話になると、「行けたら行く」という人がいます。そうすると幹事さんは困りますよね? あの人来るのかな~来ないのかな~って。キャンセルチャージがかかるときなんて、どうしよう。などと、その人が行くか行かないかをはっきりさせないだけで、振り回される。その次にご飯行こうっていうときに、「あの人また来るか来ないかわからないよ」となるじゃない。それでもう信頼というものは薄れていくわけですよ。

約束を守るのはすごく大切だけど、その前に約束を「する」ということが大切ですよね。

本当にそう思います。「そのうち」や「また行こう」は日本人の社交辞令のようになっていますが、これらをやめることが第一歩になりそうですね。

(撮影協力 本多佳子)

#1 コミュニケーションが最大の武器になる。
#2 ビジネスでイニシアティブをとるのは、一番「考えている」人。
#3 自分を信じられなくなったらあと何を信じるんだろう。